研究概要 |
断層で地震性(固着)すべりが発生したとき、断層面やその周辺の岩盤は大きなダメージをうける。それらはすべりによるせん断性の割れ目や破砕物質の摩耗による細粒物質の形成によって特徴づけられる。一方、サンアンドレアス断層などの巨大な断層帯では、すべり面の周りに広く発達するせん断の証拠を伴わない粉砕岩が報告されている。これらは、S波を超える高速のラプチャー進展に伴って発生する衝撃波によって形成されたという考えがある。固着すべりの大きさやラプチャー進展速度に対する、ダメージの大きさや特徴を明らかにすることは、断層の発達過程や地震の発生履歴を明らかにするために重要である。 本研究では、地震性すべりに伴うラプチャー進展と断層のダメージを評価するために、ガス圧式三軸試験機を用いて人工石英単結晶および天然の石英多結晶体の固着すべり実験を行った。封圧180MPaの実験では、大きな固着すべりが発生し、試料はすべり面から数mm以上の深さまで細かく粉砕した。高い封圧下にもかかわらず,モードIの破壊様式が卓越し,せん断破壊の証拠は認められなかった。このときのラプチャーの進展速度はS波速度を超える4km/sec以上であった。よって,ラプチャー先端から放射された衝撃波が,激しい粉砕現象をひきおこした可能性が示唆される。固着すべりの後に断層面近傍に残留する応力を評価するために、EBSD法を用いて回収試料の格子歪解析を試みたところ、歪測定の定量が可能な明瞭な回折パターンが取得できた。
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