1.目的 なぜ地球にだけ、花崗岩質の大陸性地殻が生まれたのかは、地球史における重要課題である。初期の大陸地殻岩石「Archean TTG」の成因として、多くの研究者はスラブ融解を考えており、融け残りはエクロジャイトであるとし、沈込帯における成因と考えられている。しかしながら、狭義のグラニュライト相とエクロジャイト相の境界には、漸移部としての「ザクロ岩グラニュライト相」がある圧力幅をもって存在する。この問題の解決には、衝突帯におけるザクロ石グラニュライト相岩石の形成とデラミネーションの検討が不可欠である。 研究対象として、島弧・大陸性地殻の衝突域にみられる変成岩類やTTGの分布域をターゲットとする。具体的には北海道中軸部のTTGおよび南極地域の変成岩・深成岩を用いる。TTGの研究を火成岩として行うのではなく、想定される融け残り石を変成岩岩石学的に解析することにより、TTGマグマが発生した温度-圧力条件を包括的に明らかにすることを目的とする。 2.本年度の研究実績 (1) 野外調査 ターゲットとする北海道中軸部のTTG質岩体について野外調査を行った。さらに、第50次南極地域観測隊セールロンダーネ山地地学調査隊に隊員として参加し、野外調査を行った。 この地域は地球上における過去最大級の大陸諸突イベントの場である。この地域の調査により、東西ゴンドワナ大陸の衝突により形成されたと考えられている変成岩類やTTG質岩体の多量の良好な試料を採取することが出来た。野外調査においては、本研究費で購入したGPSが非常に役に立った。 特に、南極のセールロンダーネ山地では従来あまり注目されてこなかった、ザクロ石角閃岩や苦鉄質グラニュライトに関し、良好なサンプルを多量に発見・採取することが出来た。 (2) 試料の選定と室内作業 岩石薄片の作成を行い、基礎的な記載を行うと共に、比較的新鮮な試料を選び、岩石試料の粉砕を開始した。 特に、南極・セールロンダーネ山地の試料は重要である。今後、本科学研究費による研究を遂行するに当たり、「ザクロ石グラニュライト相」「TTG」に関わる地球上でまたとない最良の試料が得られたものと思われ、次年度以降の研究で画期的な成果が上がると期待される。
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