研究概要 |
なぜ地球にだけ大陸性地殼が生まれたのかは、地球史の重要課題である。初期の大陸地殻岩石「Archean TTG」の成因として、多くの研究者はスラブ融解を考え、融け残りはエクロジャイトであるとしている。しかし、狭義のグラニュライト相とエクロジャイト相の境界には、漸移部として「ザクロ石グラニュライート相」が、ある圧力幅をもって存在する。この問題の解決には、衝突帯におけるザクロ石グラニュライト相岩石の形成とデラミネーションの検討が不可欠である。 これまでの野外調査により、南極セールロンダーネ山地と北海道からTTG質火成岩や高温変成岩の試料を採取することができた。本年度はこれらの試料のについて解析を進めた。 セールロンダーネ山地においては、従来角閃岩相と考えられてきた地域からグラニュライト相岩石を発見し、大陸衝突域のテクトニクスが解明されつつある。当初計画で狙ったとおり、ザクロ石グラニュライト相の岩石が見いだされ、解析が進みつつある。また、この研究の過程で、セールロンダーネ山地からコランダム-スピネル-ヘグボマイトを含む岩石を見いだした。この岩石は変成作用解析の重要な指標になると思われる。これについては近日中に国際誌に投稿予定である。日高変成帯においては、トーナル岩の起源について従来の考え方を覆しつつある。これらの成果について、昨年度だけで9回にわたる学会発表を行った。 また、今年度の目標であった鉱物分離ルーチンの構築をはじめるとともに、CHIME年代の測定・計算ルーチンを構築し始めた。いくつかの放射性鉱物についてU,Th,Pb,REEのEPMAでの測定に成功した。まだ多少の問題はあるが、有意な年代が得られつつあり、当教室におけるCHIME年代測定に成功しつつある。
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