研究概要 |
本年度の研究は,典型的なニュージーランドの大陸性島弧の地球化学的データセットの解明に基づいて行われた.マイタイテレーンと,やや進化したペローラス・ワイパパテレーンについて,堆積岩の主成分・微量成分および各元素比による地球化学的特徴およびテクトニック・セッティングの判別を行った.マイタイテレーンの堆積岩は塩基性・珪長質のバイモーダルな特徴を示し,対照的にワイパパテレーンの堆積岩は中間的な特徴を示す.希土類元素組成および関連指標についても明らかにし,海洋性島弧のデータ(根室グループ)や活動的大陸縁の堆積岩(トーレスおよび四万十テレーン)と比較検討した.その結果,地球化学判別図において海洋性島弧と大陸性島弧の領域はほとんどオーバーラップし,これら二つの領域(海洋性島弧と大陸性島弧)の区別は不可能であることがわかった.この理由は堆積岩の地球化学的特徴が,その起源である火山岩の性質に規制されることによる。しかしながら希土類元素パラメータ(La_N/Yb_N;La_N/Sm_N;Eu/Eu^*)は両者の識別の可能性を示唆する.希土類元素は海洋性島弧,大陸性島弧,活動的大陸縁の順に次第に増加する傾向があることがわかった.また,海洋性島弧および大陸性島弧のデータは,微量元素および希土類元素組成が,砂岩と泥岩とで明らかに異なることを示している.この差異は活動的大陸縁や非活動的大陸縁の一部においても認められ,これらのテクトニック・セッティングの異なる環境における堆積岩を識別するのに役立つものと予想される.
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