研究概要 |
1)本研究は,広域的に採集した多数の砂岩試料より分離した砕屑性ジルコン・モナザイトの年齢を測定し,その年齢分布から後背地の時空変遷を整理し,白亜紀に起こった中央構造線の横ずれ変位量を見積もろうとするものである.この目的のために,H22年度は以下の地域を調査し,砂岩試料を採集した. A.西南日本内帯:群馬県および栃木県に分布する足尾帯のジュラ紀付加体,京都府の丹波帯と大阪府高槻地域の超丹波帯 B.西南日本外帯:九州東部の秩父帯,関東山地の秩父帯と四万十帯の付加体 C:琉球列島:沖縄県沖縄本島の本部半島と伊是名島および,奄美大島に産する秩父帯と四万十帯 2)H22度においては,LA-ICP-MSによるU-Pb年代測定方のシステムの立ち上げを行った.また,前年度に採集した試料を含め,約20試料について,その砕屑性ジルコン・モナザイトの年齢をEPMAとLA-ICP-MSを用いて測定した.その年齢分布の特徴は以下のとおりである. A.秋吉帯と超丹波帯のジルコン年齢は,舞鶴帯夜久野岩類のジルコン年齢に類似しているが,ジルコンの化学組成が異なり,陸弧起源と推定される. B.九州黒瀬川帯のに分布する整然層の後背地はペルム紀中頃に一旦火成弧の影響が強く表れるが,トリアス紀以降になると北中国地塊の影響が強く表れるように変化する. C.九州東部の秩父帯南帯の下部ジュラ系の砕屑性ジルコンは,秩父帯北帯のものと異なり,むしろ西南日本内帯のものに類似する. D.これまでのデータを総合すると,白亜紀中央構造線の左横ずれ運動の規模は,最低でも800kmを超えるものであった.
|