研究概要 |
本研究は,中生代白亜紀後期から新生代にかけてユーラシアプレートとインドプレートの衝突に伴うネオテチス海の収斂に関係するオフィオライトの起源について,岩石学的・地球化学的手法を用いて検討を行うことを主目的として開始された。平成20年度は研究の初年度であり,まず,これまでの先行研究のまとめと超苦鉄質岩に含まれる鉱物のEPMAを用いた化学分析を行った。マラカンド超苦鉄質岩体は,単斜輝石に枯渇したハルツバーガイト〜ダナイトから構成され,ダナイト部にはしばしば小規模のクロミタイトボディが形成されている。これらの岩石は,最上部マントルから地殻の漸移帯を構成する部分に相当すると考えられる。岩石学的・鉱物学的検討結果に基づくと,ハルツバーガイトは,最上部マントル〜地殻漸移帯部分の溶け残りマントルに相当し,さらにダナイトは,メルト成分の通過場所であることがある程度推定できた。岩体内の同一地域におけるハルツバーガイト-ダナイト-クロミタイトに含まれるスピネルの化学組成はほぼ同じであり,むしろ岩体内の場所ごとに異なっている。これは,マントル-モホ漸移帯付近を通過するメルト成分の化学的多様性に依存するものと考えられる。詳細な内容は,平成21年度の研究計画で実施される微量元素を用いた地球化学的アプローチで検討する予定である。 さらに,平成20年度には,愛媛大学総合科学支援センターに新型の誘導結合プラズマ質量分析装置が導入され,そのセットアップと標準物質を用いた機器性能の確認を行い,本研究遂行のための基盤整備を行った。本研究で扱う溶け残りマントル物質中には極低濃度の微量元素が含まれており,この岩石中の微量元素を精度良く分析するためには,前処理用の清浄な実験室環境が必要となる。20年度は,誘導結合プラズマ質量分析装置のセットアップとこの前処理用の実験室整備も併せ,地球化学的アプローチの準備を行った。
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