研究概要 |
パキスタン北部のマラカンド超苦鉄質岩体を構成するハルツバーガイト,ダナイト,及びクロミタイト中のケイ酸塩鉱物について,希土類元素(REE)組成に基づいた,最上部マントル付近でのマグマプロセスについて検討を行った。基本的に,当該岩体は,ザクロ石安定領域からスピネル安定領域における多段階での大規模部分溶融イベントを経た溶け残り物質である。岩体を構成する超苦鉄質岩の希土類元素パターンは殆ど全てスプーン型あるいはU字型を示し,さらに極度にMREEに枯渇している。岩体北東部のハルツバーガイトでは,岩石の涸渇度と単斜輝石の含量との間に規則性は認められない。換言すると,最もREEに枯渇したハルツバーガイト中の単斜輝石含量が高かったり,反対に,最も枯渇していないREEパターンを示すハルツバーガイトには単斜輝石含量が低かったりする。ハルツバーガイトには,U字型のパターンを示すものとHREEからLREEに向かい,単調に規格値が低下する直線的なパターンを示すものが存在する。よりREE濃度の高いハルツバーガイトほど左下がりの直線的なパターンで特徴付けられる。さらにダナイトは相対的にHREEに枯渇し,LREEに富んでいる。また,クロミタイト中のケイ酸塩鉱物のREEパターンはハルツバーガイトとダナイトの中間的な性質を示す。以上のREEパターンの多様性をVernieres et al.(1997)によるplate modelを用いて説明を試みた。その結果,最上部マントル付近における,ある種のメルト浸透流と溶け残りマントル物質との相互作用により,一連のREEパターンの多様性を説明できることが明らかとなった。
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