中央海嶺での拡大様式や海嶺の構造は、拡大速度とメルト供給のバランスで決まっており、メルト供給量はマントルソースの温度や組成を反映していると考えられる。従って、拡大速度がほぼ等しい中央海嶺での拡大様式・海嶺の構造は、マントルソースの温度・組成条件の違いの結果であると推測される。この仮説のもと南西インド洋海嶺の東経34度から40度の海域でドレッジによって採取された玄武岩類・カンラン岩類の分析を行った。 調査海域の西端の断裂帯から、マントル起源のかんらん岩を礫として含む礫岩を採取した。かんらん岩は蛇紋岩化作用が著しく、70体積%以上が蛇紋石などの変質鉱物であり、かんらん石は2体積%未満であるが、輝石類の保存は良い。単斜輝石の微量元素組成から、このかんらん岩は比較的深部のざくろ石かんらん岩安定領域で融解を開始し、スピネルかんらん岩安定領域まで引き続き部分融解したことが推定された。 調査海域の東端のセグメントは、従来より特異な同位体組成(DUPAL異常)を持つ玄武岩が産出することが知られている。本研究で得られた玄武岩類の同位体組成分分はまだ行われていないが、微量元素組成は隣接するセグメントに産出する玄武岩よりも著しく枯渇していた。拡大速度が同じ隣接する中央海嶺のセグメント問で、微量元素組成に著しい違いが認められる事は、中央海嶺玄武岩の組成に拡大速度よりもむしろ、マントルソースの違いを反映しているとする、我々の仮説を支持するが、主成分元素組成からはマグマ形成の温度と圧力も異なっているとする計算結果が得られているため、どの要素が最も強く影響しているのかを検討する必要がある。
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