研究概要 |
本年度は,2009年11月,湿原表面が乾燥した時期を狙って,根室市南部沼において探査実験を試みた.各測線長は50~400mで,その結果,100MHz,200MHzでは6~7m程度のイメージングが出来,現在の湿原表層を覆う泥炭層(層厚1~3m),を詳細に読み取ることができた.さらに,泥炭層を透過し地表から下位の前浜~上部外浜堆積物の堆積構造のイメージングに成功した.これにより,汀線の後退によって湿原環境が広がっていった過程が明確に読み取れた.Noggin 250MHzでは,より高精度のイメージングに成功した.これらの成果は,湿原環境での地中レーダー探査の有効性を意味している. さらに根室市の第一産業(株)の協力を得て,南部沼西部,根室市桂木地区にある採石場において大規模な湿原断面を観察する機会を得た.この結果,以下の4点が明確となった. ・沖積層基底の海進面(不整合面)が反射面として明確にトレースできた. ・NS13層の津波堆積物がNOGGINで明確に捕らえられた.これによって,非破壊(掘削無し)で津波堆積物をトレースできることが実験的に証明された. ・露頭で見えていた地震性土石流堆積物が反射面で捕らえられた. 特に,泥炭層下位の海浜堆積物の堆積構造が地中レーダー記録で明確に捕らえられた成果は意義深く,これに基づき,南部沼地域の過去5500年間の海面変動が既存のレーダー記録から読み取れる可能性が高いと考えられる.
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