研究概要 |
昨年度は, 研究代表者・分担者が二つの航海(IODP Exp.321航海Pacific Equatorial Age Transect, JAMSTEC平成20年度深海調査航海)に乗船し, 新生代の堆積物およびマンガンクラストを採取する, ということが重要な計画であった。しかし, 前者の航海は, 原油高騰等の理由により, 今年度に延期となった。そのため, 赤道太平洋海域におけるデータは得られていない。一方, JAMSTEC航海の方は海況にも恵まれ, 多くの水深から多数のマンガンクラスト試料が得られた。船上において, 水深ごとのクラストの厚さの分布等の予察的なデータが得られたが, 現在のところ, 試料採取地点付近における溶存酸素極小層との関連は見いだされていない。また, 基礎的な項目についての記載は, 現在実施中である。 さらに, これまでのデータベースから, 様々な海域, 水深, 時代から得られたマンガン酸化物を対象として, 時空分布の見直しを行った。これにより, 過去一億年間の大洋では, 特に深層域において, マンガン酸化物の沈殿は継続されていたこと, が認識された。ただし, 現在の手法では, 時間分解能が不十分なため, マンガン酸化物の成長史における成長停止の時期の特定は曖昧なままである。この点は今年度の課題であり, Os同位体を用いた年代決定を行う予定である。以上の成果の詳細については, 2009年1月の古海洋シンポジウム, および2009年3月のPrecambrian World 2009において公表し, 世界の最先端の研究者と議論を重ねることができた。
|