研究概要 |
昨年度,研究代表者は研究航海(IODP Exp.321航海Pacific Equatorial Age Transect : PEAT)に乗船し,新生代の堆積物の記載・採取を行った。この航海および姉妹航海であるExp.320航海の結果,東赤道太平洋の海域では,新生代を通して溶存酸素極小層の下限が少なくとも水深2700m以浅であったことが確認できた。さらに,堆積・続成環境に関しては,後期中新世から鮮新世にかけて,大量のドロマイトが生成されたことが明らかとなった。現在その詳しい成因および時空分布については検討中である。また,得られた堆積物のうち,後期中新世の炭酸塩堆積物については,約10万年の時間解像度でOs同位体比を分析中であり,同時代の海水Os同位体比の復元がなされつつある。これまでの低時間解像度の分析では同時代の海水Os同位体比は単調に上昇すると考えられていたが,今回の分析により,複雑な変化パターンの存在が認識できた。これらの解析を進めることより,各種海洋イベントおよび気候イベントと海洋の垂直循環の関係が明らかにできると考える。 また昨年に継続して,各種データベースから,様々な海域,水深,時代から得られたマンガン酸化物を対象として,時空分布の見直しを行った。このなかから代表的なマンガン酸化物を抽出後,その成長史を復元することから,IODP Exp.320航海および321航海の堆積物記録から明らかにできなかった溶存酸素極小層の上限について,制約条件を与えたいと考える。
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