研究概要 |
海洋プランクトン化石珪藻の多様化・変遷史の支配要因が、亜熱帯循環の成立、パナマ地峡の閉鎖、亜寒帯循環の成立など、海洋の表層循環の変遷であったと考えられている。この仮説の検証を主目的に本研究を進めている。具体的には、国際深海掘削計画-微古生物標本・資料センター(Micropaleontological Reference Center)に保管されている微化石標本を用い、属・species complexレベルで生存期間が長く、広域に分布して、多産する種・morphologic typesの、現在、200万年、500万年、1000万年、1600万年前の地理的分布図を作成し、これらと海洋の表層循環変遷史とを対比することによって、上記検証を進めている。 初年度にあたる今年度は、生存期間が長く、堆積物に多産するThalassionema spp.Cavitatus spp.を解析対象に研究を進めた。 1.北太平洋、赤道太平洋、インド洋-南太平洋から採取された5本のDSDP-ODPコア(Sites 884,806,574,1023,266)を用いて解析を進めた。5本のコアから、古第三紀以降に、Thalassionema spp.の21種・morphologic types、Cavitatus spp.の14種・morphologic typesを識別し、それらの時空分布を明らかにした。 2.中新世以降、多様性の地理的傾斜と、優占種・morphologic typesの地理的分布に明瞭な差異が認められた。多様性は東赤道太平洋で高く、優占種・morphologic typesは、北太平洋、赤道太平洋、インド洋-南太平洋で異なる。これらの事実は、多様性・優占種・morphologic typesの地理的分布が表層大循環に起因する表層水塊分布に対応していることを示唆する。
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