平成20年度には、実際に試料を採取し相対古地磁気強度のデータを取得するために、南太平洋の40°Sから50°Sの海域において海洋研究開発機構の調査船「みらい」を使用して2009年2月6日〜3月14日に調査航海をおこなった。古地磁気強度の復元に適した酸化的で、陸源物質(有機物を含む)の供給が少ない堆積環境の海域を選定し、音響調査により堆積構造を解析し最適な採泥ポイントで、ピストンコアラーにより3カ所から試料採取取した。それぞれ4000mの深度より遠洋性堆積物および半遠洋性堆積物を取得した。これらには有孔虫の炭酸塩化石等が含まれることから酸素同位体での年代決定が期待される。試料は2009年の7月に陸揚げのため、それまで研究を進めることはできないが、船上の堆積物の色差測定の結果では堆積物に数メートルの周期的な色の変化が見られ、これは数回から十数回の氷期-間氷期サイクルを示していると推定される。 堆積残留磁化の獲得をモデル化するために、そのフィルタリング効果を計算で表す事を試みた。単純化するため、ある範囲でランダムに方向のみの磁場変動を与えた場合に、堆積速度を変化させることにより、方位にどのような変化が起るか計算した。堆積速度を小さくすると有為に方位のバラツキが少なくなり方位の集中化が起こった。これは堆積残留磁化のフィルタリング効果を再現できたことを示していると考えられる。今後は方位の変化に加え、さらに強度の変動も計算する予定である。
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