研究概要 |
本研究においては堆積物に記録された地球磁場強度の記録を詳細なタイムスケールとして広く適応できるよう,堆積物の磁化獲得の特徴である磁化記録固定の遅延,および堆積速度変化が,堆積物への地球磁場強度の記録がどのように影響するかを検討している.平成21年度には,酸化的な環境で堆積し,比較的堆積速度が遅いと考えられるフィリピン海盆上の堆積物コアの古地磁気測定をおこなった.また他の岩石磁気的なパラメータの取得をおこない,地球磁場強度のプロキシーを計算した.一方で堆積物の年代をコントロールするため,挟在する火山灰層の同定を行った.樫ノ崎海丘南部の海底下1mほどにAT(姶良Tn)火山灰が広く分布しており,良い同時間面になることが分かった,さらに他の岩石磁気的パターンをチューニングすることで,年代モデルを構築した.異なる堆積速度のコアにおいて,岩石磁気的なパラメーターと地球磁場強度のプロキシーデータを比較したところ,岩石磁気パラメーターの変動パターンはコア間において同様であるのに対して,地球磁場強度のプロキシーデータは相違が大きい.特に遅い堆積速度の地球磁場強度のプロキシーデータは基準曲線と対比するのが難しい事が分かった.この事は堆積物の岩石磁気的変動は堆積・環境変動等に支配されているが,堆積物の地球磁場強度の記録はフィルタリング効果が効いているためと推定される.このような堆積物の地球磁場強度記録をシミュレーションを使って再現できる可能性が高い.
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