本年度は、南インドでの現地調査を実施するとともに、特に南極産のコンダライトとそれと互層する不純大理石並びにそれらの間に発達した「スカルン」の詳細な記載・分析を行い、さらに高温・高圧部分融解実験を開始した。 本年度の研究の成果として特筆すべきことは次の3点である。1パーアルミナスなコンダライトが斜方輝石や単斜輝石を含むメタアルミナスな岩石(一種のチャルノッカイト)に移化することが確認された。すなわち、岩石の総化学組成が成層構造に不調和的に大きく改変されていることが鉱物組み合わせから確認された。2上記の、コンダライトがチャルノッカイトに移化する部分に出現するザクロ石の単結晶に、母岩の総化学組成の勾配に対応するような化学組成の勾配があり、さらにそれに接した斜長石にも顕著な組成勾配があること明らかになった。これは従来報告されたことのない新しいタイプの組成累帯構造として、注目に値する。3不純大理石中のMg-Alに富む岩塊(従来、これもスカルンとされてきた)中の石墨結晶の表面によく保存された渦巻き成長模様が見いだされた。この石墨は、グラニュライト相高温部の変成岩中で灰長石と董青石に接しており、そのような石墨に渦巻き成長模様が確認されたのは世界で初めてである。これは下部地殻におけるグラニュライト相変成作用時の流体の有無や組成に関する新しい情報や制限を与えるものとして特に重要である。現在、上記の新しく見出された事実や現象を鋭意解析している。
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