研究概要 |
北海道糠平、留辺蘂、サンル,下川,丸瀬布地域に産する中新世のデイサイト~流紋岩の地質調査と岩石採集を行い,それらについて(1)EPMAによる鉱物の化学分析、(2)ICPマス及び蛍光X線装置による岩石の主要・微量元素組成の精密分析、(3)表面電離型質量分析計によるSr,Nd同位体比の測定などを実施した。デイサイト~流紋岩のSr同位体比は0.7045~0.7065の値を示し,Nd同位体比は,0.5126~0.5124を示す。これまでに報告されている,ほぼ同時代に形成された北海道北部地域の玄武岩のSr同位体比は0.704以下の低い値である。またNd同位体比は0.5128以上の高い値である。このように,デイサイト~流紋岩は同位体組成的に玄武岩とは著しく異なっていることが明らかとなった。このことから,デイサイト~流紋岩は,玄武岩質マグマの単純な結晶分化作用によっては形成されないことは明らかである。デイサイト~流紋岩の成因としては,下部地殻の部分溶融あるいは玄武岩質マグマの地殻物質の汚染作用のいずれかが考えられる。前者の場合には下部地殻を溶融した熱源は玄武岩質マグマに求められるであろう。
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