平成21年(2009年)4月から平成22年(2010年)3月の作業と進展について整理する。平成20年度(2008年度)に予察的に実施し、平成21年度(2009年度)に公表を予定していた鉄欠損型磁鉄鉱についてのリートベルト解析と銅をドープした磁鉄鉱についてのリートベルト解析結果はまだ投稿原稿を作成する段階に至っておらず、今年度(平成22年度)に作業を継続する。平成21年度(2009年度)には鉄欠損型磁鉄鉱、ヘマタイト、マグヘマイトを含めた多様な鉄系酸化物についてEXAFS解析とXANES解析を実施し、それらの電子状態の相違について検討した。従来第一近似的には吸収端位置をもって価数の相違と配位環境の歪みを評価していたが、吸収端での吸収プロファイルの微細構造を検討したところ、吸収の極大位置と微分プロファイルの両方を用いて評価する必要かある事が示された。この内容は平成21年度(2009年度)夏に国際会議にて公表済みである。平成20年度(2008年度)のアナタースに引き続き平成21年度(2009年度)もチタン系試料(ルチル)についての詳細な検討を実施した。遷移金属酸化物では特に3d軌道を占める電子の状態が問題になり、本申請課題も3d軌道の電子状態と電子密度分布の違いを検出することを目的としている。二酸化チタン系では酸素欠損量(Ti 3d軌道での電子の過剰)、と色彩と関係が従来言われていた「深青色濃度=酸素欠損量」という単純なものではなく、定比組成近傍では色彩と酸素欠損量の関係が逆転することがあることが示された。この結果は今年度の国内学会と来年度の国際学会で発表する予定である。
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