研究概要 |
本年度は, 宮城県仙台市周辺及び秋田県男鹿半島, 北鹿地域などを中心に研究課題に沿つた第三紀火山岩についての野外調査を実施し, 標本採集, 岩石薄片の作成, 顕微鏡観察などを行ったほか, 東北日本の第三紀火山岩全体についての文献調査を開始した. それと並行して, 従来から行つていた北陸地域の第三紀火山岩, 特にその中から発見した低Ni玄武岩やアダカイトに関する研究のまとめを行い, その成果の一部を付加体緑色岩中の超苦鉄質火山岩成因と関連づけて2008年12月のAGU秋季大会(サンフランシスコ)で発表した. これらはどちらもマントルにおける苦鉄質岩の溶融により形成されるが, 溶融の深さが大きく異なると考えられる. この研究成果については平成21年度中に論文を公表する予定である. 関連する研究成果は2008年6月のAOGS会議(釜山)と8月の第33回IGC(オスロ)でも発表した. また, 平成20年6月14日の岩手・宮城内陸地震の発生に伴い, 地域研究を柱とする所属研究センターの方針に則つて, この地震による強震の分布を実際の建造物の被害状況から広域的に描き出し, その分布状況と地質との関連を考察することを目的として, 岩手・宮城・秋田3県にまたがる墓石転倒率の現地調査を本科学研究費補助金によつて緊急に実施した. その成果は所属研究センターの紀要である「東北アジア研究」13号(平成21年3月発行)に論文として発表した他, 同センターや日本地質学会のホームページ, 学会講演を通じて公表した. この研究の実施に当たっては, 論文の共著者となっている学生の協力を得た. これらの研究成果は既に中越沖地震など他の地震に関する調査報告に引用され, 役立てられている.
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