研究概要 |
これまでの筆者らの研究で、調査地域イタリアBalmucciaの超マフィックシュードタキライトには、マクロには無構造で火成岩的組織をよく残したものと、ウルトラマイロナイト組織を呈する完晶質なもの(mylonitic pseudotachylyte、以下M-PSTと略す)の2タイプがあることが判明していた。筆者はこのような組織の違いは,地震時の摩擦発熱によって生じたメルトが,冷却固化する祭に,断層辷り停止の早い,遅いの違いによって生じるという仮説を提唱した(H22年度連合大会)。その後夏のBudapestでのIMA参加のあと,イタリアBalmucciaを再訪し,院生の上田匡将と共に8月27日から9月7日まで現地調査を行い,昨年に続いて,pseudotachylyteの詳細な野外観察と携帯コアピッカーを用いた追加サンプリングを行った。本年度の重要な成果は,(1)上述の無構造シュードタキライトの周縁部がmyloniticタイプに漸移するサンプルが複数見つかったこと,(2)断層脈から注入脈が発生する様子が詳細に観察できるサンプルがあらたに得られたこと,(3)上の中間的なタイプでシュードタキライト中のかんらん石結晶の特定の方向の縁に、斜方輝石リムが普遍的に発達し,これがストレスマーカーに使えるかもしれないことが分かってきたこと,(4)マイロナイトシュードタキライトはかんらん石の光学的方位を異にする二つのドメインに分かれていることが判明してきたこと,である。成果(3)については研究協力者である院生上田匡将が筆頭で、地震の震源過程のメカニズムのモデル考察は筆者が、それぞれ地質学会で発表した(9月、富山)。マイロナイトシュードタキライトについては、EPMAで鉱物分析を継続するとともに、EBSDを用いてかんらん石のLPOデータを多数取得することで、高精度の記載を行い研究を進展させることができた。
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