研究概要 |
三波川帯に産するエクロジャイト岩からザクロ石・オンファス輝石・角閃石・フェンジャイト・ジルコンを分離し,複数の年代法(Rb-Sr, Sm-Md, U-Ph,K-Ar, Lu-Hf岡位体システムによる年代法)を適用し,沈み込み過程から地表への上昇過程において,その試料が被った現象を年代学的に明らかにすることを試みた,本研究で用意した二つの試料は岩石学的な特微が大きく異なり,一つは石英に富むエクロジャイト,もうひとつは苦鉄質エクロジャイトである.全岩に対し,主要元素分析を蛍光X線分析装置を使って,また微量元素分析を四重極型誘導結合プラズマ質量分析計により行った.さらにSr同位体およびMd同位体分析分析と同位体希釈法によるRb・Smの濃度分析を表面電離型質量分析計により行った.またザクロ石・オンファス輝石・角閃石・フェンジャイト・ジルコンの鉱物分離を行った.このうち,角閃石とフェンジャイトは初生的な組成のものと二次的過程で形成されたものとに分離することに成功した. 二次イオン質量分析計を使ったジルコンのin-situ分析によるU-Pb年代とザクロ石-オンファス輝石-初生角閃石-全岩およびザクロ石-オンファス輝石-全岩によるSm-Mdアイソクロン年代により研究に使ったエクロジャイトが最高変成度に達した年代を明らかにすることができた.また,フェンジャイト-全岩,角閃石-フェンジャイト-全岩によるRb-Srアイソクロン年代はそれより系統的に6~10Ma若い年代値を示し,変域ピーク後の二次的過程のタイミングを明らかにすることができた.フェンジャイトと角閃石のK-Ar年代はRb-Sr年代法により得られた年代よりもさらに27Ma若い年代値を示し,それは,これまでの研究により得られたK-Ar年代値とほぼ一致するものであった.さらに本研究に使った試料においてエクロジャイトの冷却史も明らかにすることを含め,現在,Lu-Hf年代法を適用した分析が進行中である.
|