研究概要 |
地球表層の風化環境では微生物起源の様々な有機分子(多糖、タンパク質、その他)が鉱物の溶解反応に関与していると考えられている。そこで、本年はカオリナイトの溶解速度に及ぼすタンパク質の影響を評価するため、ジョージア産カオリナイトKGa-1試料を用いてオボアルブミン(OVA)を含む溶液中での溶解実験を行った。OVAは分子量45kDa、アミノ酸残基385、等電点pI=4.6のタンパク質で、詳細な構造は良く知られている。溶解実験では、まず、pH3~8領域でのOVAを含まない無機溶液(コントロール系)での実験を行い、無機溶液中でのカオリナイトの溶解速度を算出した。次に、OVA濃度0.05,0.1,0.2,0.5,1.0mg/mlを含むpH6~7の溶液を調整し、この溶液中でカオリナイトの溶解実験を行った。実験の結果、OVA濃度0.05~1.0mg/mlにおいて、溶解速度R=9.87x10^<-13>;1.53x10^<-12>;2.07x10^<-12>;9.65x10^<-12>;1.10x10^<-11>mol/s/m^2の値が得られた。これらの結果は、無機反応系と比較してOVAを含む系ではカオリナイトの溶解速度が約1.5,2.3,3.1,14.2,16.2倍増大したことを示しており、OVAによるカオリナイトの溶解促進効果が確認された。このことは、環境中に存在する生体有機分子、特にタンパク質の作用によって鉱物の溶解速度が著しく促進される可能性があることを実験的に示唆するものである。
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