地球表層環境で進行している鉱物の溶解反応には微生物の作用が大きく関与していると考えられている。これまでの研究で、微生物の関与による鉱物の溶解は微生物細胞から放出されたタンパク質や多糖などの有機分子による表面錯体形成が主要な因子として機能していることが示唆されている。しかしながら、それらの実験的な検証、定量評価、反応機構などは明らかにされていない。そこで本研究では、微生物によるカオリナイトの溶解促進を定量的に検証するため、バクテリアを含む反応系でのカオリナイトの溶解実験を行った。実験方法は、10mMのNaCl溶液100mLを用いたバッチ法を基本とし、ジョージア産カオリナイト0.2gを用いて行った。バクテリア試料は10^5~10^9cells/mlのP.fluorescensを用い、25℃の条件で20日間の反応を行った。反応期間を通して、溶液pHと溶液中のSi及びAlイオンの濃度、さらにバクテリア細胞から放出された溶液中の有機分子(タンパク質と多糖)濃度の測定を行った。溶解実験の結果、カオリナイトの溶解速度はバクテリア濃度の増大に伴って1.6~10.4倍増大することが確認された。溶液中の有機分子濃度分析の結果、バクテリア細胞から主要有機分子としてタンパク質の放出が確認され、これらのタンパク質がカオリナイトと表面錯体を形成することで、カオリナイトの溶解を促進していることが明らかとなった。
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