研究課題
超高温変成作用の典型例とされる東南極ナピア岩体の岩石試料について、以下の検討と考察を行った。・サフィリン+石英鉱物共生とその反応組織の意義づけサフィリン+石英という鉱物共生は、ナピア岩体を特徴づけるものであり、かつ超高温条件を直接的に示唆する鉱物学的証拠でもある。通常、サフィリン+石英は鉱物間の反応によって他の鉱物共生を生じており、それは岩石の経験した物理化学条件の変化を反映している。今回、それらの反応組織とその分布を詳細に再検討した結果、リーセル・ラルセン山の中央部と西部とではサフィリン+石英の分解生成物に違いがあること、すなわち中央部では菫青石もしくはザクロ石が形成されているのに対し、西部では斜方輝石+珪線石が形成されていることがわかった。この事実とこれまでの温度勾配の解析結果から、リーセル・ラルセン山を含む地域の垂直断面を想定し、中央部および西部ブロックのテクトニックな変動モデルを構築した。・相平衡解析プログラムによる検討相平衡解析プログラムTHERMOCALCを用いて、FMASH系におけるサフィリン、石英、菫青石、ザクロ石、斜方輝石、珪線石鉱物共生の温度圧力条件、とりわけ無水と含水条件との比較検討を行った。その結果、含水条件下において、菫青石の安定条件がより高圧側にシフトすることがわかった。以上のことから、菫青石の形成は温度圧力条件のみならず、無水・含水条件によっても左右されることがわかった。また、これまでナピア岩体に適用されてきた等圧冷却経路がほぼ妥当であることも確認した。モナザイトを用いた年代学的検討サフィリン+石英を含む岩石中のモナザイトについて、EPMAを用いて年代測定を行った。その結果、ほとんど変形を受けていないサフィリン-斜方輝石片麻岩はおおよそ2400Ma付近に集中するのに対し、変形の強いサフィリン-斜方輝石-石英片麻岩は、2300-800Maと年代値が分散することがわかった。このことから、上述した変動は中期〜後期原生代以降にかけての変形作用と加水作用に関係したものであると主張した。
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Geodynamic Evolution of East Antarctica : A Key to the East-West Gondwana Connection, ed. by M. Satish-Kumar et al. Geological Society of Special Publication. 308
ページ: 253-282
ページ: 377-390
ページ: 147-164
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