研究概要 |
1.有珠火山1663年軽石噴火の噴出物の高温高圧岩石融解実験を行った.これまで行ってきた一連の実験にデータを追加するものである.98〜196MPa・750〜850℃において,産業技術総合研究所の内熱式ガス圧装置を用いて行った.得られた実験産物と過去の実験産物について,電子線マイクロアナライザによる化学分析・組織観察等を行ない,各圧力・温度における鉱物およびメルト相の種類・化学組成・量比を決定し,天然の軽石と同じ岩石学的特徴を再現する圧力・温度を求めた.これにより,有珠火山のマグマ溜まりの深さ(圧力)が約10km(250MPa)であることを確認した.また,その結果をまとめた論文を作成した. 2.樽前火山1667年軽石噴火および北海道駒ヶ岳1640年軽石噴火の噴出物の岩石学的観察・分析を行った.特に樽前については,斑晶鉱物について電子線マイクロアナライザによる化学分析・組織観察等を行ない,斑晶には由来の異なる複数のタイプが存在することを明らかにした.これにより,1667年噴火直前にマグマ混合(異種のマグマの混入)が起こっていることを示した.さらに,岩石中に含まれる様々な種類・タイプの斑晶がそれぞれどのマグマに由来するものかを,斑晶の組成や組織の分類によって推定し,混合の端成分を決定した.また,噴火の末期に噴出した軽石はこのマグマ混合の影響を受けておらず,今後行う高温高圧岩石融解実験に用いる試料として適することを確認できた.
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