研究概要 |
1.産業技術総合研究所の内熱式ガス圧装置を用いた高温高圧岩石融解実験,および実験産物の電子線マイクロアナライザによる分析・観察を,引き続き行った.有珠火山のマグマ溜まりの深さを推定した論文の改訂作業を行ない,これを完成させた(印刷中).樽前火山1667年軽石および北海道駒ヶ岳1640年軽石の噴火直前のマグマ溜まりの条件について,予察的な実験(主に熱力学的モデルを用いた数値実験)を行ない,いずれも900-950℃で100MPa前後(深さ4km程度)であると推定した. 2.樽前火山1667年噴火および北海道駒ヶ岳1640年噴火の軽石噴出物の岩石学的観察・分析を,引き続き行った.樽前火山については,主に磁鉄鉱斑晶の組成・組織観察に基づき,噴火前に高温マグマが少なくとも2段階で混入していたことを発見した.さらに,第1段階のマグマ混入は噴火の数年前でこれがマグマ溜まりの構造を変えたこと,第2段階のマグマ混入は噴火の数週間前以内でこれが噴火のトリガーになった可能性があることが分かった.北海道駒ヶ岳についても,斑晶鉱物について電子線マイクロアナライザによる化学分析・組織観察等を行なった結果,由来の異なる複数のタイプが存在しており,樽前火山と似たマグマ混入プロセスが噴火前に起こったことが示唆された.
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