研究概要 |
原始生命は熱水中で誕生したとする熱水起源説が注目されているが,熱水中で生体ポリマーが効率よく生成する妥当な経路は見つかっていない,また,これまでに行われたシミュレーション実験では,鉱物と熱水が相互作用する高速反応は研究困難であった.本研究では,深海底の熱水噴出孔をダイナミックに模擬して,原始地球環境でペプチドが生成する経路を発見することを目的とし,第1に熱水噴出孔を模して,350℃・400気圧までで鉱物触媒反応を追跡できる世界初の熱水フローリアクターを開発し,第2に我々が発見した前生物的ペプチド生成反応を基礎として,熱水中で進む鉱物触媒によるペプチド生成反応を探索する.本年度は,鉱物触媒熱水フローリアクターシステムの製作と評価を行い以下の成果を得た. 1. これまでのノウハウを生かして,温度275℃,耐圧性能300気圧までで,固体と熱水が共存する不均一系反応を実施・追跡できるシステムを試作した. 2. 試料が反応器に滞在する時間を数秒~数10秒程度でコントロールできる反応器として,管型反応器を検討した.また,管型反応器のフィルター素材を検討して,どのような素材が天然鉱物の漏れを防止するかを検討し良好な結果を得た.また,鉱物の粒子サイズの影響を調べた. 3. 以上の鉱物を充填したリアクターを用いて高温下でシステムが正常に動作するかどうかを検討し,概ね250℃以上での使用条件と装置の操作法をルーチン化した. 4. 本システムを用い,ダミー粒子を用いて我々が発見したオリゴペプチド生成反応を実際に行えることを確認した.今後,鉱物の触媒作用の検討ができる見通しを得た.
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