目的:酸性降下物等により森林土壌からのカルシウム流出が増加すると、カルシウム欠乏が動植物の生育に悪影響をおよぼすことが懸念されている。本研究では、水に溶解しやすく土壌に保持されにくい有機錯体カルシウムの存在割合が高くなれば、カルシウム流出が加速される可能性に着目し、「森林土壌から渓流に流出する溶存態カルシウムは、カルシウムイオンとして存在するのか、それとも可溶性有機錯体として存在するのか」を、野外観測と室内実験に基づいて判定し、その結果の地球化学的意味を解明することを目的とする。 全体計画:平成20年度は水溶液中のカルシウムイオンと有機錯体カルシウムの分離・定量法を確立する。平成21年度は、カルシウムの形態別分析を筑波山水系で行い、「森林土壌から渓流に流出する溶存態カルシウムは、Ca2+イオンとして存在するのか、それとも可溶性有機錯体として存在するのか」の判定を試みる。平成22年度以降は、土壌におけるカルシウムの保持・流出の再現実験を行い、カルシウムの有機錯体が生成しやすい条件、錯体の生成が流出を促進する効果、カルシウムの有機錯体の生成がアルミニウムの有機錯体の生成を妨げる効果の解明を試みる。 平成20年度の成果:イオン選択性電極によるカルシウムイオン分析法の詳細を検討した。その結果、容器底部で磁石式回転子を使う系(少量の試料で分析可能という利点があるが、発熱による分析精度悪化が懸念される)と、容器上部からモーター式小型撹拌機を挿入する系(前者よりも、必要な試料量が多いが、発熱は少ない)を比較することとした。
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