本研究では磁気ミラー配位を用いて低エネルギーかつ低電流(数pA)の荷電粒子を蓄積する際の特性を明らかにすると共に、効率の良い、新しい荷電粒子蓄積方法を実験的に確立するのが第一の目的で、第二の目的は低強度(<30μCi)の放射性同位元素(RI)を用いて極低電流の低エネルギー陽電子ビームを生成し、実際に新しい蓄積方法を適用して蓄積実験を行うことである。 平成22年度は申請書に記した研究計画方法に基づき、第二の目的のために整備した陽電子の輸送に必要な磁場コイルや陽電子の計測系を用いて、低エネルギー陽電子の蓄積を試みるとともに、磁気ミラー中に閉じ込められた非中性電子プラズマの特性を調べた結果を論文(Plasma Fusion Res.5(2010)030)として発表した。ちなみに、実験データは「プラズマ核融合学会誌」2010年9月号の表紙に掲載された。今年度明らかになったのは ・磁場勾配ならびに密度勾配をもった非中性電子プラズマにおいても静電波振動(磁力線方向のプラズマ振動や磁気軸と垂直な方位角方向のdiocotoron振動)は計測可能で、その周波数はプラズマの密度や温度に依存するため一様磁場の場合と同様に非破壊診断に利用可能である ・磁気ミラーで閉じ込められた非中性プラズマ中に励起されるソリトン波は、伝播方向によらず高磁場側で伝搬速度が減少する こと等である。現時点で低エネルギー陽電子の蓄積は確認できていないが、これはRI(22Na)の強度(<30μCi)が弱すぎるためと考えられ、今後高強度のRIを用いて陽電子源を整備したうえで、低エネルギー陽電子の蓄積や電子-陽電子プラズマの実現を目指す予定である。
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