マイクロ化学チップやマイクロチューブ等のマイクロ流路内壁の薄膜コーティングを実現するμプラズマ生成・制御技術の確立、マイクロ流路内のプラズマ気相-表面反応の解明が本研究の目的である。本年度は、内径1mmの石英管の表面に貼り付けた平行平板電極を用いたRF(14MHz)励起のCCPμプラズマ生成条件を、He、Arガスに対し減圧から大気圧に渡り調査した。さらにプラズマパラメーター、ラジカル生成や前駆体の解離反応の制御の為に強磁場(磁束密度:0.4T)印加による“磁化μプラズマ"の生成を試みた。その結果、(1)パッシェン曲線極小値に対応するガス圧力(10-20kPa)でプラズマの伸びが電極長の5-10倍と最大になること、(2)“電子サイクロトロン振動数>電子-中性ガス衝突振動数“および"電子ラーマー半径≪石英管内径"の条件下で『RF振動するE×Bドリフトによる磁化μプラズマ』が生成すること、を明らかにした。また、磁化μプラズマ生成条件下で、電子温度はガス圧力に反比例して増加した。この結果、マイクロ流路内プラズマの制御に強磁場が有効であることが示唆された。 次に、大気圧He、減圧Arのμプラズマを用いて内径1mmのポリプロピレン(PP)チューブ内壁へのSiO_2(TEOS)薄膜のコーティングを試みた。この時、強磁場(磁束密度:0.4T)が成膜に及ぼす影響も調べた。SEMによる表面観察、XPSによる化学結合状態や元素定量分析の結果、滑らかな表面形状を有するSiO_2膜が、成膜速度約100nm/分でコーティングされたことが判った。また、強磁場印加による差異は確認できなかった。
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