研究概要 |
本研究の目的は、地下実験室での暗黒物質直接探索において、散乱断面積の核種依存性を用いることにより従来行われている方法よりも、さらに信頼性の高い証拠を出すための検出器を発展させることにある。観測されたデータから証拠を引き出すには、1,十分バックグラウンドを下げた環境で暗黒物質からの信号による検出器に寄与されたエネルギースペクトルを取得する。2.季節変動によるエネルギースペクトルの違いを見る(数%)3.方向に感度を持った検出器(例えば圧力の低いガス)を用いる。などがあり、後者ほど信頼度がます。本研究では複数の液体検出媒体を用意し、それを入れ替えることで原子核による反応の違い(数倍)を測定すできる検出器の開発を行っている。現実的な反跳核エネルギー閾値25keVを仮定すると、ArとXeでは、そのイベント頻度が約2倍も違い、季節変動による数%の変動に加え、より信頼性の高い証拠になり、中身の液体を変えるだけなのでコスト的にも非常に有利である。この技術を応用し、将来のXMASS検出器に適用すれば既存の検出器を使用して、暗黒物質精密測定に発展させることができる。 H21-H22年度においては、液体キセノンの原子核反跳とガンマ線による波形弁別の測定、まとめを行い、液体アルゴンの信号と比較する準備をおこなった。液体キセノンでの結果は暗黒物質探索に非常に有利な情報が得られた。今後、これらの結果と液体アルゴンでの測定を踏まえ、核種依存性を用いた暗黒物質探索の可能性を探る。
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