研究概要 |
本研究の目的は、地下実験室での暗黒物質直接探索において、散乱断面積の核種依存性を用いることにより従来行われている方法よりも、さらに信頼性の高い証拠を出すための検出器を発展させることにある。特に液体希ガス検出器は大質量化しやすく、暗黒物質のような稀な事象を探す実験では有利である。ArとXeでは、そのイベント頻度が約2倍も違い、季節変動による数%の変動に加え、より信頼性の高い証拠になり、中身の液体を変えるだけなのでコスト的にも非常に有利である。しかし、そのためには液体キセノン(発光波長175nm、170K)と液体アルゴン(発光波長125nm,87K)のシンチレーション光を検出できることがあり、既存のPMTでは液体アルゴン温度ではどうさせず、さらに125nmのシンチレーション光をとらえるには波長変換材が必要となる。本年度においては、液体窒素による低温動作試験と液体アルゴンを用いた小型検出器によるシンチレーション光を計測する試験を行った。液Arよりも温度の低い液体窒素を用いた試験ではLEDを用いてPMT(R8778LAr,2本)の動作試験、ゲインの応答を測定した。PMTは液体窒素でも問題なく動作し、そのゲインは常温に比べて約1.2または1.5倍程度高くなった。既存のPMTとは違い極低温でも量子効率に問題が見られず、むしろ上がることがわかり、それぞれ約1.3倍、1.2倍上昇した。次にこのPMTを液体Arに浸しシンチレーション光の測定を行った。波長変換剤にはp-テニフェニルを含んでいるプラスチックシンチレータを波長変換材として用いて、シンチレーション光も観測に成功し、将来の核種依存を用いた暗黒物質探索の可能性があることを示すことができたと言える。
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