研究課題
本研究は、西南日本の玄武岩中の捕獲岩に発見されたダイヤモンドから示唆されるマントル上昇流の実体解明を目標とするものである。その産地のマントル、地殼捕獲岩り岩石学的研究から、島弧リソスフェアを構成する通常の岩石成分(浅部成分)と深部に由来する岩石成分を識別できるか否かを課題としている。平成21年度は、斜長石かんらん岩、斑れい岩質岩を中心に研究試料を増やし、鉱物化学組成、岩石組織等の記載岩石学的研究を進めた。詳細な解析の結果、斜長石はかんらん岩中にネットワーク状に侵入した玄武岩質のメルトから、単斜輝石、斜方輝石、スピネルと共に晶出したものであることが判明した。さらに、斜長石は2つのタイプに分類でき、(1)脈状の構造を残し、壁岩のかんらん石との間に細粒鉱物の集合体を伴うタイプと(2)タロット状に点在し、他の鉱物相と平衡組織を示すタイプがある。両者の鉱物化学組成の傾向に明瞭な違いが見られ、付随する単斜輝石の微量元素組成も異なり、それぞれ、火成岩組織を明瞭に残す斑れいノーライト、変斑れい岩質なグラノブラスティック組織を持つノーライドに対応付けられることが明らかになった。(1)と(2)は周囲の鉱物相との化学平衡の到達度も異なり、形成時期も定性的に識別できる。こめ結果により、西南日本の前弧域において、時期の異なる複数のマグマ活動が存在することが初めて認識された。これらの岩石は、アジア大陸東縁のテクトニクスとリソスフェア形成史を読み解く重要な手がかりを与えてくれる。
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Earth and Planetary Science Letters (in press)
Journal of Mineralogical and Petrological Sciences 105
ページ: 9-19
Island Arc 19
ページ: 192-207