研究課題
平成20年に日本で初めての天然ダイヤモンドが報告され、深部由来の物質が西南日本下に上昇してきた可能性が浮かび上がった。その実態解明とダイヤモンドのさらなる発見につなげるためには、地下物質の産状をより詳細に理解する必要がある。平成22年度には、産地の地殻やマントル由来の捕獲岩について、起源マグマと構造の観点から岩石学的な研究を行った。具体的には、岩石種の再分類、鉱物化学組成に基く形成温度圧力条件の推定から深部構造を復元し、微量元素組成から成因的な関係を検討した。詳細な化学組成の対比の結果、以下のような複数のマグマ活動が認識でき、西南日本のリソスフェアの構成が大きく変化してきた事実が明らかとなった。(1)多量のマグマ生成によるマントルの枯渇と上方へのマグマ供給、(2)シリカに富む流体もしくはメルトによるマントルメタソマティズム、(3)深部由来のアルカリ火山岩マグマとマントルの反応を通じた斑れいノーライトの形成である。(3)は、西南日本全域のアルカリ玄武岩活動と関連づけられ、かつ最も深部に由来するためダイヤモンドとの関連性が最も期待される。このマグマの起源深度を制約することで、日本の天然ダイヤモンドの成因について制約が得られると考えられる。また、基盤構造としてダナイトがモホ面直下に広く分布する可能性が見出された。ダナイトはスラブ流体との反応に置いて通常のマントル物質とは異なる挙動をするため、プレート境界モホ面直下に特異な物性を生じさせる可能性がある。今後も西南日本全域で捕獲岩の調査を続け、ダナイトの分布を確認する必要がある。
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