研究概要 |
アミノ酸の中で最も簡単なキラル分子であるアラニンのラセミ混合物をCu(001)表面に吸着させると,D体とL体の領域に分離し,[110]方向に異なる相の境界線を形成するという興味深いSTM像が観測される。D体,L体,あるいはラセミ体ともアラニン分子は,アミノ基のN原子とカルボキシル基の2つのO原子で表面Cu原子と吸着することにより分子間の水素結合ネットワークを形成するため,相分離を達成している境界での分子間結合は特別なものと期待される。そこで,STM強度の変化に対応した境界での吸着構造モデルを決定した。この違いを反映して,D体あるいはL体とラセミ体における吸着エネルギーに違いが現れた。さらに,異なるキラル分子間の水素結合の安定性には,表面Cu原子の歪みも関わることが吸着構造の低速電子回折の解析から分かった。
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