研究概要 |
Pt高指数面電極の表面構造の決定は昨年度で終了したので,今年度はPd単結晶電極の表面構造の決定に研究を展開した。Pd単結晶電極の中でも,Pd(100)面はPt単結晶電極の3倍以上の酸素還元活性を持つ。しかし,Pd単結晶電極の表面構造はPd(111)を除いて,電気化学環境下では決定されていない。Pd単結晶電極の表面構造を電気化学環境下で決定することは,燃料電池の酸素還元反応を活性化する電極触媒開発の基礎として極めて重要である。 Pdの基本指数面(Pd(111),Pd(100),Pd(110))とPd(311)=2(100)-(111)面の実構造を,表面X線回折(SXD)を用いて,0.1M HClO_4中0.5V(RHE)で決定した。Ar飽和溶液中では,どの面も面内では(1×1)構造である。この結果は,2原子列のテラス幅を持つPt(110)とPt(311)面が(1×2)に再配列するPt単結晶電極の場合と異なる。基本指数面の層間隔もバルクと実験誤差範囲内で一致するが,Pd(311)の層間隔はバルクよりも大きい。 一方,酸素飽和溶液中の面内構造は,すべての面においてAr飽和溶液中と同様に(1×1)構造である。この結果から,Pd電極上の酸素還元反応の活性サイトは4回対称の(100)構造であることが証明された。層間隔は4層目まで拡大し,Pd(311)面の緩和が最大である。酸素の電子吸引性が高く下地のPd原子が正に帯電し,静電的な反発が強まって層間隔が広がったと解釈される。同様の現象は,酸素を吸着させたRu(0001)上でも観測されている。
|