シンクロトロン軌道放射光を利用した表面X線散乱(Surface X-ray Scattering;SXS)測定により、当該年度は以下の2つのテーマで実験し、それぞれの界面の原子/分子配列を決定した。また、各SXS測定では、それぞれ電気化学セルの改良や入射X線のエネルギー最適化によって高速化した。 1.Au(111)上に電析したPt超薄膜内の原子配列決定 通常、原子番号が隣り合わせの基板金属/析出金属界面の原子配列を、SXSによって詳細に決定する事は構造因子が近い値をとるため不可能である。そのため、ここでは入射X線のエネルギーを析出金属である白金のPtL_<III>吸収端近傍に合わせ、さらに種々の散乱点における散乱X線強度の入射エネルギー依存性を測定し、両者を相互に解析する事によって界面の原子配列を決定する、共鳴SXS (Resonance SXS;RSXS)法を採用し、Au(111)単結晶基板上に電析法によって作製したPt超薄膜内のPt原子配列を詳細に決定した。その結果、電析時の過電圧が比較的大きい場合には三次元的にPtが析出し凹凸の大きなPt超薄膜が、過電圧が比較的小さな場合には二次元的にPtが析出し原子レベルで平坦なPt単原子層が得られる事が分かった。また、このPt単原子層は下地基板のAu原子配列と同じ「pseudomolphic」な配列をとっている事を明らかにした。 2.Au(111)上およびAu(100)上に電析したPd原子配列の面方位依存性 Au(111)およびAu(100)単結晶基板上にPdを電析していくと、どちらの基板上でも1層目は下地Au原子間距離を維持してPdが電析するのに対し、Au(111)上では2~3層目から、Au(100)上では20層目あたりからPd原子間距離がPdバルクのそれと同様になる事を見出し、その違いについて議論した。
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