凝集反応系のダイナミクスをどのように理解すればよいか。我々は振動励起したHF分子から周囲の水溶媒系へのエネルギー緩和を通して、そのダイナミクスの特徴を理解しようと試みた。 凝集系のダイナミクスは確率的に理解されるべき対象であるため、物理量を確率密度分布の観点で評価する必要がある。これを実現するために、超多並行分子動力学計算システムを開発した。 このシステムを用いて、エネルギー緩和系の調査をしたところ、HF分子に伸縮振動モードに与えたエネルギーの多くが水分子の内部振動モードを利用して伝搬することが分かった。伝搬モードはHF分子の励起方法により異なり、分子間共鳴がエネルギー移動を支配しているという結論に到達した。 凝集反応系をモデル化したKramers-Fokker-Planck方程式との対応を調査するためには、扱われる変数がどのような空間座標系に対応するのかを考察する必要があった。凝集系では分子は熱的に揺らいでいるため、座標系は観測したい時間スケールに応じて定義を改変する必要があると考えた。実際、分子動力学計算により時間スケールの違いを評価したところ、分子運動の時間スケールに応じてダイナミクスの特徴が変化することが分かった。
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