研究概要 |
密度汎関数強結合法に基づくカノニカル分子動力学シミュレーション(DFTB/MD法)を用いて、35A長のアームチェア型(n,n)単層開端カーボンナノチューブのn=3(直径4A)から10(直径13.5A)までについて、3000Kおよび3500Kの高温条件下における自己閉端を、各々のナノチューブと温度の組み合わせに対しそれぞれ3本ずつトラジェクトリーを走らせることにより研究した。開端部分は単純にナノチューブの軸方向に対して垂直に切断し、系のダングリングボンドはそのままにしたCUTモデルと、ダングリングボンドをカルボキシル基と水素原子を1対1の割合で用いて飽和させたOXモデルの2つを想定した。シミュレーションの結果、温度に依存して、開端部分はCUTモデルの場合には純粋な炭素のみからなるCnフラグメント(n=1,2,3)を失う傾向にあり、OXモデルの場合には前述したCnフラグメントに加えて、CO2、CO、CnH、OHなどが失われる傾向にあった。n=3の場合を除いて、ナノチューブは100ピコ秒オーダーのシミュレーション時間の間に自己閉端することが可能であった。自己閉端に必要な時間は温度に対して最適な直径(3000Kの場合n=6、3500Kの場合n=5)より大きくなると、急激に増大した。また、小さな直径の場合の自己閉端は効率的ではなかった。これは、環ひずみの影響が大きくなりキャップ形成が困難となるためと予想される。n=3のナノチューブは高度にひずみ、現在のシミュレーション温度では崩壊した。ナノチューブを構成する環の大きさについて統計をとったところ、キャップ形成の結果として、最初6員環のみで構成されていたナノチューブに、正の曲率に関連する5員環が10〜20混合し始めた。 一方で負の曲率に関連する7員環は、ほとんど見られなかった。この結果は以前のフラーレン自己集合化の研究結果と一致していた。
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