研究概要 |
1.カーボンナノチューブ内部の水の構造と相図 この研究課題について以下の結果を得た。制約空間内の単純液体の構造はパッキングでほぼ説明できるが、水ではネットワーク形成が重要な役割を果たす。カーボンナノチューブ内における水の固体構造は以前から報告されているアイスナノチューブ構造を含め、9種類が確認された。その多くは2次元四角格子を巻くことによって発生する幾何学的構造をとる。 細孔直径に対する融解曲線は1.1nm付近で極大を示し、そこからの直径増大・減少に対し、ほぼ単調に減少する。融点の変化は110Kにも及ぶ。融解・凝固挙動は、ナノチューブ直径1.2nm以下ではほぼ常に連続的、それ以上では不連続的となる。 2.水のプラスチック相 水の標準的なモデルを用いて分子動力学シミュレーションを行い,これまで指摘されていなかったプラスチック相を見つけ,その性質を調べた。この結果は現実の水においてもプラスチック相が存在する可能性を示唆するものである。プラスチック相では各分子はその並進運動は制約されているが,回転運動は液体中と同様に制約がない。分子シミュレーションから,高圧において氷VIIを加熱した場合及び液体の水を冷却した場合にプラスチック相が出現することを見出した。 3,細孔内流体の相平衡と固液界面張力の細孔サイズ依存性 カーボンナノチューブ及びスリット型細孔内におけるアルゴンの構造,相平衡,界面張力等をグランドカノニカルシミュレーションによって調べ,以下の結果を得た。単層ナノチューブと多層ナノチューブにおけるアルゴンの吸着曲線の違いは,アルゴン-ナノチューブ間引力相互作用の差でほぼ説明できる。チューブの直径が小さいときには吸着は完全に連続的に起こるが,直径が大きい場合には二段階の吸着が起こることがわかった。
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