研究概要 |
本年度は包接水和物の安定性,濡れ転移の理論,および水素水和物の相図についての研究成果が得られた。 1. 包接水和物の安定性 水素分子を含む包接水和物は高圧下でのみ安定な固体であるが,第二のゲスト分子 としてアセトンを添加するとその解離圧が減少することを分子シミュレーションと統計力学理論に基づいて説明した。 2. 濡れ転移は通常一次転移として観測され,臨界濡れ転移は特異な条件においてのみ許されると認識されてきた。われわれは標準的な濡れ転移のモデルを用いて,一次転移,二次転移,高次転移がおこる条件を明らかにした。その結果,数学的に「無限次」転移で特徴付けられる極めて弱い濡れ転移がモデル中の「標準状態」近辺で出現することが明らかになった。このモデルと関連する厳密に解けるモデルを用いても,結果の主要な部分を得ることができた。 3. 水素+水系の相図 高圧における水素と水の2成分系の相図をモンテカルロシミュレーションに基づいて得ることに成功した。特に,氷IIと氷Icに水素分子が溶け込んだ水和物の相とその他の相との相境界を確定した。水素および水の化学ボテンシャルを圧力,温度,モル分率の関数として計算し,実験では得られていない,圧力-モル分率平面における相図を得ることができた。
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