研究概要 |
当初の計画では,電子顕微鏡用の電子銃や排気系を含めて現有のものを流用して,装置の鏡頭部を製作することになっていた。また高圧電源は,以前所属した研究機関において予備として購入したまま全く使用せずにいたものを用いることを考えていた。しかし作業に着手した時点になって,電源と電子銃を接続するケーブルおよびコネクタの入手が,電源メーカーによる製造中止とその後のメーカーそのものの吸収合併による消滅によって,事実上不可能になっていることることが判明した。この時点で,可能な限り現有の機器や部品を流用するという当初の計画に必ずしもこだわらず,高圧電源・ケーブル・電子銃までを入手する方策を種々検討した。その結果,最終的には国内メーカーの中古の走査型電子顕微鏡を購入して,その高圧電源・ケーブル・電子銃・鏡頭部ならびにこの部分を排気する真空ポンプまでを流用する事に決定した。購入費用は計画に計上していなかったので,所属研究機関の通常の研究費を充てた。 最初の計画で使う予定だった古い電子銃と電源の組合せでは,電子ビームの加速電圧が40kVであり,これは電子の波長では0.06Aに相当する。これに対して今回入手した走査型電子顕微鏡は加速電圧が30kVで,電子の波長0.07Aに相当する。これによって電子の散乱角に違いが生じるが,この程度の差は本体の設計変更によって対応可能であった。入手した走査型電子顕微鏡の鏡頭部は最初の計画のものに比べ,格段に小型化されており,これを用いることで,最終的には本研究の目的の一つである装置の小型化が,より確実に達成できるものと期待される。また,鏡頭部が小型であることの利点を活かすため,全体の構成を申請時に計画したような,電子ビームが水平方向に走るものから,垂直に走るものに変更することを考え,全体的な設計変更を行った。
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