研究概要 |
昨年度は,市販の走査型電子顕微鏡に組み込むための部品の設計図面を描き,製作を発注した。本年度は実際にそれらの部品を走査型電子顕微鏡に組み込み,以下のように動作確認などを行った。 ・当初は,電子ビームとノズル先端の位置合わせには,従来の気体電子回折で用いられてきた,金箔による散乱を利用した方式を採用する予定であった。しかし,走査型電子顕微鏡が備えている二次電子検出システムを利用することで,あたかも電子銃の位置からノズルを見下ろしたような画像がCRTに表示されることがわかった。そのため,金箔を用いる必要がなくなり,装置外から金箔を操作して電子ビームの途中に出し入れする機構も不要になった。 ・また,全体のシステムを簡便にするために,装置外からノズル位置を微調整する機構も廃した。そのため,上記の二次電子検出システムによる画像を確認しながら,一一々ノズルシステムを装置外に取り出して位置調整をし,再び装置内に戻して電子ビームを出して位置調整,という手順を踏む必要がある。しかし従来型の大型の気体電子回折装置で数時間かかった,真空のリーク・再排気・電子ビーム出し,というシーケンスが,わずか十数分で行うことができるようになり,この方法での位置合わせが極めて効率的であることがわかった。また,電子ビームの位置の安定性が従来の気体電子回折装置とは比較できないほど向上していて,一度ノズルの位置合わせをしておけば,事実上,それ以降は位置合わせの必要が無いこともわかった。これは,当初の目標であった「誰でも使える簡便な操作性を備えた装置の開発」という目的を満たすものであり,初年度において方針を「一からの装置製作」から「走査型電子顕微鏡の流用」に変更したことの妥当性が確認された。
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