研究課題/領域番号 |
20550022
|
研究機関 | 東邦大学 |
研究代表者 |
尾関 博之 東邦大学, 理学部, 教授 (70260031)
|
研究分担者 |
小林 かおり 富山大学, 理工学研究部, 准教授 (80397166)
神代 暁 産業技術総合研究所, エレクトロニクス研究部門, 超伝導計測デバイスグループ長 (60356962)
|
キーワード | テラヘルツ / 絶対強度 / 圧力幅測定 / ギ酸メチル / 振動励起状態 / 分配関数 / 亜酸化窒素 |
研究概要 |
今年度は振動回転準位の帰属が完全に行われていないギ酸メチルについて、未知の振動励起状態に関する分光学的情報を得る目的で絶対強度測定を行った。研究初年度に実施した一連の実験から、本研究において使用している受動分光装置を用いて求める絶対強度には相応の誤差があることが判明したため、分光計を構成する光学系などの再検討し、誤差を抑制することにまず努めた。また、亜酸化窒素のスペクトル強度を二次的な強度較正源とし、誤差の周波数偏差を勘案することにより全体として10%程度かそれ以下の精度で絶対強度が議論できるようになった。 その上でギ酸メチルスペクトルの絶対強度を測定し、振動基底状態および第一ねじれ振動状態のみを考慮した振動回転分配関数を用いて計算した理論強度を比較したところ実測値は理論値の40%程度であることが判明した。これは第二ねじれ振動励起状態をはじめとする未知の(未帰属の)振動励起状態が考慮されていないことによるものと考えられた。そこで第一原理計算により振動励起状態を計算した結果を基に全振動励起状態を考慮した振動分配関数を見積もったところ、常温においてそれまで使用していた値の約2.5倍となり、実測のスペクトル強度がほぼ説明できることが明らかになった。次に測定温度を常温から-20℃程度まで変化させ、スペクトルの実測強度と理論強度の乖離が温度変化に伴ってどうなるかを調べた。第一ねじれ振動励起状態まで考慮した理論強度と実測強度の乖離は測定温度の低下と共に改善し、その程度は第一原理計算から予測される傾向と矛盾しないことが判明した。このことは第一原理計算により予想されている、分光学的に同定されていない未知の振動励起状態のエネルギー準位の分布が本実験により大枠において正しいことを示している。
|