インシュリンアミロイド線維について、1100MPaまで加圧して高圧FT-IR測定を行った。その結果、インシュリン中間体から初期段階で形成されたアミロイド線維は550MPaの加圧により融解するが、十分熟成して形成されたアミロイド線維は1GPaの圧力に対して極めて安定であった。高圧NMR(一次元、二次元)法を用いてアミロイド線維形成の引き金になるインシュリン蛋白質(A鎖、B鎖)の詳細な分子構造変化を測定した。200MPaまでの加圧で蛋白質分子中の水素結合距離は減少し、B鎖の一部で圧縮が生じ、B鎖L15メチル基が大きな変化を受け、さらに加圧すると部分的な水和(蛋白質分子への水の浸入)が促進された。100MPaまでの加圧によりA鎖のヘリックス1とB鎖のN、C末ストランドで大きな部分構造の変化を観測し、この構造付近で共同した構造変化と体積揺らぎが生じていると予測した。
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