本研究の目的は、光周波数コムの利用による超高分解能特性と、高フィネス光共振器の利用による超高感度特性とを併せ持った分光計測システムを構築し、多原子分子の電子・振動・回転スペクトルを精確に測定することによって、電子励起状態におけるダイナミクスを解明することである。具体的には、環境汚染物質や生体分子の基礎となる多原子分子の電子励起状態について、状態間摂動、項間交差、分子内振動エネルギー再分配等の興味深い現象の詳細を解明する。 平成20年度は、超高感度分光計測システムの構成要素の設計および製作を行った。超高分解能分光計測システムは基本的には既設のものをそのまま使用するが、安定度の向上を計るために、光学系や制御システムのエレクトロニクスの改良を行った。 具体的には、試料を封入する真空チャンバーおよび高フィネス光共振器の設計および製作を行った。真空チャンバーは、高真空を保ちつつ、ミラーの角度制御を行うことができるように配慮して設計を行った。高フィネス共振器は、フィネスや共振器の安定性を総合的に考慮して設計を行った。この高フィネス共振器に使用するミラーの反射率は、分光計測を行う570nm付近で反射率が99.99%以上のものであるが、共振器の安定化を行うため、安定化用レーザーの波長630nmでは反射率95%程度の低い反射率とした。次に、高フィネス光共振器の出力光強度をフォトダイオードで測定し、デジタルオシロスコープに取り込み、コンピューターに記録するシステムを組み上げた。
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