今年度(平成20年度)は合成面で大きく進展し、平成21年度実施予定であった、異なる置換基を有する非対称置換ビス(2-エチニル-3-チエニル)アレーン(以下、ETArと略す)ユニットの合成を、計画を前倒しして実施することができた。またこの研究成果を基に、対称置換型ではあるが、両親媒性型誘導体の予備的合成を行うことができた。この誘導体は、本研究対象の、ETArユニットから構築される蛋白模倣系の基本形となるものであり、重要な結果である。以下に詳しく説明する。即ち、まずチエニル基間をp-フェニレンで繋いだETArスペーサーにイミダゾリル基やチエニル基、ピレニル基、アズレニル基、p-置換フェニル基、ベンジル基等を導入した誘導体を合成し、その性質について検討した。さらに、この型のETArスペーサーの中央ベンゼン環に、フッ素原子を2個導入した、ETB(F2syn)スペーサーおよびETB(F2anti)スペーサーを開発した。これは本研究着手後に浮かんだアイデアであり、これによりフッ素原子がエチニル側鎖の配置に対して立体的・電子的に影響を与えることが期待される。また、チエニル基間をビフェニルで繋いだETAr誘導体を種々合成し、その性質についても比較検討した。これらスペーサーにより、側鎖間の距離を調整できることが期待される。さらに非対称置換型ETAr誘導体を合成し、また対称置換型ETArユニット間をオリゴメチレン鎖で連結した誘導体も合成した。これにより、理屈の上からは配列制御連結の手法ができたことになり、計画全体の鍵となる成果である。なお、このような成果から今年度は誘導体合成に集中し、合成した誘導体の結晶構造については平成21年度に検討することとした。
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