研究概要 |
前年度(平成21年度)の研究において主軸延長用の補助スペーサーとして、3-エチニルチエノ[3,2-b]チオフェン型補助スペーサーとベンゾチオフェン型補助スペーサーを開発した。しかし前者の原料となるプロモチエノチオフェンは効率的な合成法がなく高価であった。そこで後者の合成法を応用して、新たなプロモチエノチオフェン合成法を開発した。補助スペーサーおよびその原料が効率的に供給できるようになったので、次に側鎖配列(シークエンス)を制御した(エチニルチエニル)アレーン連結系の構築について検討し、3種の異なる側鎖(即ち、フェニルエチニル基,メチル基,トリイソプロピルシリルエチニル基)を、この順序の配列で持つ(エチニルチエニル)アレーン連結化合物を合成した。さらに主軸の延長について検討し、5つの側鎖の配列制御可能な経路で新たな(エチニルチエニル)アレーン系連結化合物を合成した。この化合物の主軸部分は3nmであり、生体膜の疎水性コアを貫通できる長さである。これにより膜貫通タンパク質(膜貫通αヘリックスの疎水性部分は3nmとされる)を模倣した側鎖配列制御連結分子系の構築が期待される。さらに多様なシステムの構築を目指して、類似スペーサーユニット、即ちエチニル基の置換位置の異なる3-エチニル-2-チエニル型ユニットおよびチアゾール型ユニットを組み込んだ化合物も合成した。ここで開発した3-エチニル-2-チエニル型ユニットと前述の3-エチニルチエノ[3,2-b]チオフェン型補助スペーサーを連結した化合物のX線結晶構造解析にも成功し、結晶中で連続する2つの側鎖が同じ方向に出ていることを確認した。さらに幾つかの化合物の結晶構造解析を行い、近傍の側鎖間の位置関係や側鎖と主鎖の位置関係に関する知見を得た。これらの知見は分子折り畳みのデザインにも役立つものであると考えられる。
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