研究概要 |
本申請研究は,アルケンをチイラン化する新規で汎用性のある硫黄原子導入剤を開発することを目的とする. 昨年度に引き続き1,1'-ジチオビス(1H-1,2,4-トリアゾール)を用いたアルケンのチイラン化反応を検討し,ノルボルネンやジシクロペンクジエンが穏和な状況下でチイラン化されることを見いだした.スチルベンを用いた反応では,トランス体が定量的に回収されるのに対し,シス体がシス体とトランス体の混合物を与えることをも見いだした.他のアルケンとの反応も検討し,本チイラン化の適応範囲を明らかにした. 1,2-ベンゾジチオール-3-オン1,1-ジオキシド(1)とシリカゲルを用いたアルケンの固相チイラン化につき,表面水酸基をなくしたシリカゲルや孤立水酸基がない微細シリカゲル,吸着性のないガラス粉末を用いた反応を行い,1の分解にはシリカゲルの表面水酸基が関与すること,チイラン化には孤立水酸基の存在が重要であることを明らかにした.このことからシリカゲル水酸基の反応への関与の詳細を明らかにするため,拡散反射IR分光法を用いた解析の結果,シリカゲルの孤立水酸基と1のカルボニル基とスルホニル基の間に水素結合による相互作用が示唆され,経時とともに変化することがわかった.アルケンとシリカゲルの孤立水酸基の間の水素結合の存在は示唆されたが,アルケンのどの部位と相互作用しているのかは明らかにできなかった. 塩化メトキシカルボニルスルフェニル(2)とアルケンの反応では,2がC=C結合に付加した付加物とチイランの混合物が生成することを見いだした.
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