研究概要 |
本申請研究は,アルケンをチイラン化する新規で汎用性のある硫黄原子導入剤を開発することを目的とする. 塩化メトキシカルボニルスルフェニル(1)と環状アルケンの反応で,溶媒効果があることを見いだした.すなわち,ベンゾノルボルナジエンに1を塩化メチレン中,室温で反応させると,塩素原子とメトキシカルボニルチオ基がC=C結合に付加したtrans-およびcis-2,3-付加物と,骨格転位を伴って生成したcis-2,9-付加物を含む混合物を与え,対応するチイランの生成は確認できなかった.無溶媒下で反応を行うと前記の混合物の他にチイランが低収率ながら生成し,ペンタン中の反応ではチイランが好収率かつ選択的に得られた.一方,塩化メチレン中,シクロヘキセンと1を室温で反応させると,定量的にtrans-1,2-付加物(2)を与えた.2を水酸化ナトリウム存在下で加メタノール分解すると,好収率で対応するチイランが生成したことから,塩化メチレン中,シクロヘキセンと1を室温で反応させたのち,水酸化ナトリウムのメタノール溶液を作用させると,ワンポットでチイランが生成することを明らかにした. 1,2-ベンゾジチオール-3-オン1,1-ジオキシド(3)とシリカゲルを用いたアルケンの固相チイラン化につき,添加物の効果について検討した.アルケン,3,シリカゲルを一緒にすりつぶした混合中に過剰のシリカゲルあるいはアダマンタンを加えすり混ぜると,対応するチイランの収率は低下した.一方,混合物を過剰の臭化カリウムとすり混ぜた場合には,顕著な希釈効果は見られす,希釈しない場合と同程度の収率でチイランが生成した.これらのことより,アルケンおよび3とシリカゲルの間の弱い相互作用が反応の進行に関与していることが示唆された.
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