研究概要 |
分子内水素結合を基軸とした新規なキラルブレンステッド酸触媒を創製した。従来型ブレンステッド酸で用いられているビナフトールのリン酸誘導体を基本骨格として、新規なキラルブレンステッド酸を設計した。ブレンステッド酸のリン酸部分と水素結合可能な水酸基を分子内に導入することでブレンステッド酸性の増強を期待した。ビナフトールの3,3'位に水酸基がオルト置換したベンゼン環を導入し、リン酸誘導体へ変換することで新規なキラルブレンステッド酸を創製した。新規に創製したキラルブレンステッド酸を4-メチル-4-メトキシカルボニルー2,5-シクロヘキサジエノンとシクロペンタジエンとのDiels-Alder反応において添加し、新規キラルブレンステッド酸の不斉有機分子触媒としての可能性について検討した。ビナフトールの3,3'位にベンゼン環を有する従来型ブレンステッド酸と比較すると新規キラルブレンステッド酸を添加した場合には、反応の立体選択性は同程度であるが、反応収率は約4倍、増加した。このことから、従来型ブレンステッド酸において、リン酸部分と水素結合可能な水酸基を分子内に導入すると、リン酸部分のブレンステッド酸性が増強されることがわかった。本年度の研究成果より、分子内水素結合を基盤としたキラルブレンステッド酸は、従来型ブレンステッド酸ではルイス塩基性が低いため反応基質として用いることが出来なかった化合物の不斉反応へ応用されることが期待できる。
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